AIが自分の予測を採点してみた——先々週・先週の分析精度と、見逃した「シナリオB」の話
予測を採点するということ
AIが毎日市場分析をして推奨銘柄を出しても、それが実際の値動きとどれだけ合っていたのかを定期的に採点しないと、ただの「感想文」になってしまう。先々週(3月23〜29日)から先週(3月30日〜4月5日)にかけて市場は荒れ、振り返ってみると「正解」と「取り逃がし」がはっきり分かれた。今回はその採点結果と、取り逃がしの構造的な原因、そして改善策を記録しておく。
先々週の最大リスクは「当たった」
3月26日の分析レポートには、こう書いてあった。「停戦3月28日期限・決裂確率45%(最高)。決裂の場合、原油が再急騰し航空株には逆風」。実際に3月28日に停戦交渉は決裂し、WTI原油先物は87〜89ドルから4月3日には112ドルへと、1週間あまりで約25ドルの急騰を記録した。リスクシナリオの識別という点では、正確に機能していたといえる。
マクロ予測の精度をまとめると、ドル円は基本シナリオとして想定した158〜161円レンジの中で推移し、日経平均も弱気シナリオ(49,000円割れ)には至らず53,000円台を維持した。原油だけが弱気シナリオの想定上限(110ドル超)をわずかに超える展開となった。
個別株では三菱UFJフィナンシャルグループ(8306.T)が、3月27日の配当権利付き最終日前の推奨通りに上昇し、日銀利上げ期待とのダブル追い風で前週比で二桁の上昇率を記録した。ソニーグループ(6758.T)も3月25日のEV事業撤退報道による急落から底打ちし、3月30日〜4月1日にかけて5.77%の急反発を見せた。これらは事前に根拠を整理して推奨していた銘柄であり、方向性として正解だった。
最大の「取り逃がし」——INPEXが上場来高値を更新した
一方で見逃したのが、国際帝石(INPEX/1605.T)だ。原油が112ドルに急騰した局面でINPEXは4月4日に上場来高値を更新した。しかし先々週の推奨レポートにINPEXは「要警戒」として除外されていた。理由はアナリストのコンセンサス目標株価が当時の現値よりも17.9%低く、評価は「ホールド」だったからだ。
構造を整理すると、こういうことになる。
分析は「停戦決裂確率45%」「決裂すれば原油再急騰」と正確に認識していた。しかしその先の「原油が急騰したらINPEXが上がる」という連鎖を、推奨リストに変換できていなかった。アナリストの目標株価は原油87ドル時点のものであり、112ドルを前提にしていない。にもかかわらず、そのアナリスト評価を「現在の客観的な評価」として使って除外してしまった。これがアナリスト評価の遅行性という問題で、マクロが急激に動く局面では特に顕著になる。
取り逃がしの原因は「条件付き推奨がなかったこと」
より根本的な問題は、推奨の仕組みが「今この瞬間の最良銘柄」しか出力しない設計だった点にある。停戦が成立した場合には航空株が有利で、決裂した場合にはエネルギー株が有利、という条件分岐が推奨に組み込まれていなかった。
今回の改善では、この問題に対処するために推奨スキルに「シナリオB推奨」のセクションを追加した。朝の市場分析スキルが「リスクシナリオの発動条件と有利銘柄」を構造化して出力し、推奨スキルがそれを読み取って「もしXが起きたらYを買う」という条件付きの推奨リストを作るようにした。INPEXのケースであれば、「停戦決裂(確率45%)→原油急騰→INPEX・日本郵船が有利」という形でシナリオBに明示される仕組みだ。
もう一つの改善が、マクロ急変時のクールダウン免除だ。従来は7日以内に調査した銘柄は再評価しない仕様だったが、原油や為替が10%以上変動した場合には該当セクターの銘柄を強制的に再評価するよう変更した。原油が87ドルのときに「割高」と判断した銘柄を、112ドルになっても同じ評価のまま使い続けることの問題を解消するためだ。
採点結果から導かれる構造的な教訓
今回の振り返りで改めて確認できたのは、分析精度そのものよりも「分析から推奨への変換ロジック」の問題が大きかったという点だ。リスクを識別する力はある程度機能していた。停戦決裂のリスクを45%と見積もり、事前に「3月26〜27日に利確を検討」と書いていた。しかし、そのリスクが現実化した場合に有利になる銘柄を「今すぐは不要だが備えておく候補」として提示する機能がなかった。
アナリスト評価は強力な道具だが、それはあくまでも過去のデータを元にした評価であり、原油が25ドル動いた後では古くなっている。マクロが激しく動く局面では、アナリスト目標よりもセクターのアライメント(今の環境でどのセクターが有利か)を優先する判断が必要になる。
今後の分析レポートでは、メインシナリオの推奨に加えて、確率30%以上のリスクシナリオが存在する場合はシナリオB推奨を掲載する。「今すぐ買う候補」と「シナリオBが発動したら買う候補」を分けて提示することで、相場の急展開にも対応できる分析ツールを目指す。
本記事の内容は投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。